時代はデジタルマーケティングだ!、DXだシステムだ!とか言っている人ほど、ITに疎かったりしてその恩恵を十分に引き出すことが出来ていない方が多かったりしますが、そもそもオフライン集客もまだまだ捨てたものではありません。逆にオフライン集客でつながる、拡がる世界はさらに大きくなっている感じさえします。
流行りに流されず、腰を据えてオフライン集客の雄である「ダイレクトメール」を今一度最初から学び、取り組んでみられるのはいかがでしょうか?
ダイレクトメールの魅力・奥深さは、どれだけ精度を極めても100%には絶対にならないということ、そしてやり続けていればあまり期待していなかった、想定していなかったお客様がそれなりに戻ってくるという点にあります。
戦略的に地味なため、軽視している方が多いからこそ、仕組みをきっちりくみ上げてノウハウを積み上げている会社との差は時間の経過と共に歴然となっていきます。
ライバル企業との差を明確にするためにも、ダイレクトメール戦略を自社の顧客管理施策に組み込みましょう。
オフライン集客の種類
オンライン集客には詳しいけど、オフライン集客はあまり重きを置いていないために、いざ質問されると答えられない人もいらっしゃることと思います。まずオフライン集客にはどのようなものがあるか確認してみましょう。オフライン集客は以下の3点が代表的なものだと思います。
ダイレクトメール
ターゲットリストに郵送物を送付し、特定の商品やサービスを紹介します。
広告
テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などの伝統的なメディアを通じて広告を展開します。
イベント参加
展示会、セミナー、ネットワーキングイベントなどに参加し、直接見込み客と対話することで新規顧客を獲得します。
ダイレクトメール戦略を成功させるために必要なこと
伝統的なメディアを使った広告は一回あたりの費用がそれなりに高いこと、またイベント参加も展示会等でブースを作るとなるとある程度の費用は見ておかねばいけないことなどから逆算すると、中々中小企業にはハードルの高い施策であると言わざるを得ないのではないでしょうか。その点ダイレクトメールは、ハガキの印刷費、郵送費の点から見ても、比較的低価格で進められることから見ても魅力的であると思われます。またダイレクトメールは、新規集客にも、既存顧客にもターゲティングすることができ、業種の向き不向きも少なく非常に取り扱いやすい施策ですが、逆に極めていくととても深い世界であると言えます。そこでダイレクトメール戦略を成功させる代表的なポイントを以下に列挙します。
ターゲットリストの精査
まず一つ目がこの「ターゲットリストの精査」ですが、最初にして一番大事なのはこの点であろうかと思います。これはつまりダイレクトメールを送る対象は、商品やサービスに興味を持つ可能性が高い人々に絞るべきであるということです。つまり既にその商品を購入しちゃっているとか、興味が薄れた人にダイレクトメールを送っても意味が無いので、いかに送らないようにするか?という言葉に言い換えられます。ダイレクトメールを送っても意味がない人に送らないということは、無駄なハガキ代、郵送費をカットすることは当然として、既に商品やサービスを購入してしまった人に対し、新たな同商品・サービスの割引等のスペシャルオファーの内容を提示してしまったことによる「あの時買わずに今買った方がよかった、、、」という風な落胆を発生させることを阻止します。このことは言い換えれば、企業側はコストをかけて顧客離反の可能性を高めてしまっていると言い換えられなくもありません。直前に買ったお客様の気持ちを萎えさせないようにするためにも、当たり前のことですがそのような名簿を精査してカットすることは大事です。
送ってはいけない名簿や送らない方がよい名簿のカットが済んだら、次は商品やサービスに興味を持つ可能性が高い人々をいかにリストアップするのか?を考えます。人には購買履歴等で何かしらの傾向が現れます。辛いものが好きな方の購買履歴は必然的に辛いものが多いはずですし、甘いものが好きな方の購買履歴は必然的に甘いものが多いはずです。また商品のコレクション性が高いビジネスを扱っている場合は、お客様が購買履歴などから現時点で所有していないものを提示するべきであったりします。同じものよりも、自分が持っているインデックス群の中で持っていないものに興味を持つはずです。このようなターゲットリストの精査の時に吟味すべき点はRFMという分析手法が有名です。RFMは「Recency(最新購入日)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary(購買金額)」の3つの要素を元に顧客の分析を行います。
リストの更新とクレンジング
送付先のリストの情報は常々変化します。引っ越しで住所が変わったり、子供が出来て家族構成が変わったり、自社や他社で商品やサービスを購入したりします。その情報を記録が変わる度にしっかりと更新して最新のものにし続ける必要があります。古いデータや誤った住所が含まれていると当たり前ですが無駄なコストが掛かってしまいます。
魅力的なコンテンツとデザイン
ダイレクトメールを送ってもありきたりのデザインであれば、その多くは読まれもせずゴミ箱に直行になることでしょう。ですのでできる限りゴミ箱直行を避けるためクリエイティブなデザインが大事です。受け取り手の興味を引くような目を引くビジュアルやキャッチコピー、カラーの使用が効果的です。
次にメッセージは簡潔で、読み手にとっての価値をすぐに理解できるようにします。つまり明確なメッセージが必要であり、またオファーやコールトゥアクション(CTA)は目立つように配置するようにしましょう。
そして可能であればダイレクトメールの内容をパーソナライゼーションしましょう。受け取り手の名前や過去の購入履歴など、個々の情報を利用しコンテンツの内容を変化させて反応率を高めます。
強力なオファー
特別割引、限定商品、期間限定のオファーなど、受け取り手がすぐに行動を起こしたくなるようなインセンティブを提供します。やはり強力なオファーや特典は、一瞬で人の心を動かす時があります。
適切なタイミング
いいデザイン、強力なオファーや特典が決まればいつダイレクトメールを出してもいいわけではありません。季節的な要因、年末年始やゴールデンウィークなど特定のイベントに合わせて送付することで、反応率を高めることができます。
追跡と測定
ダイレクトメール送付後の反応を測定するために、返信用ハガキを料金後納でセットしたり、特定の電話番号、QRコード、またはオンラインフォームを使用して、受け取り手の行動を追跡できるようにします。これによりキャンペーン終了後、反応率やROI(投資収益率)を分析し、次回の施策に活かします。どのセグメントやオファーが最も効果的だったかを特定し、今後の改善に繋げます。
ABテストを行ってパフォーマンスの精度を上げていく
様々なアイデアやデザインを起こしても、果たして好結果につながるかどうかは実際のところやってみないとわかりません。ですので、同じような条件のリストに対し、デザインやオファーなど内容が違うものを分けて送ってみて反応率を見てみるという方法があります。これをA/Bテストと言います。以下にA/Bテストの基本的なプロセスを説明します。
テストの目標設定
まず何を達成したいのか、明確な目標を設定します。ダイレクトメールの場合、例えば「反応率の向上」や「コンバージョン率の向上」などが目標となります。
変数の選定
テストしたい要素(変数)を決定します。ダイレクトメールの場合、以下のような要素を変更できます。
・件名 → 件名を変更して、どちらがより開封率を高めるかをテストします。
・オファーの内容 → 割引率や特典の内容を変えて反応を比較。
・デザイン: → レイアウトや画像の違いが反応にどのように影響するかをテスト。
・コピー(文章) → メッセージの書き方やトーンを変えて効果を比較
サンプルの分割
ターゲットリストをランダムに2つ(または複数)に分割し、各グループに異なるバリエーションのダイレクトメールを送付します。これにより、各グループが等しい条件でテストを受けることになります。
テストの実施
選定した変数の異なるバージョンを、分割されたグループに対して送付します。例えば、Aグループには「オファーA」を、Bグループには「オファーB」を送るといった形です。
データ収集と分析
送付後、反応率やコンバージョン率など、設定した目標に基づいてデータを収集します。どちらのバリエーションがより良い結果を出したかを確認します。
結果の評価
データを分析し、統計的に有意な差があるかを判断します。勝者のバリエーションを特定し、それに基づいて次のキャンペーンを最適化します。
実行と最適化
勝者のバリエーションを全体のキャンペーンに適用し、さらなる改善のために次のA/Bテストを計画します。
もちろんA/Bテストを行ってパフォーマンスの高いやり方を模索していくのであれば、あまり少なすぎるリスト数ではいけません。結果が統計的に有意であるためには、十分なサンプルサイズが必要です。サンプルが小さすぎると、結果が偶然の要因による可能性が高まります。また複数の変数を同時に変更すると、どの要素が結果に影響を与えたのかが分からなくなります。1つのテストでは1つの変数に絞るのが基本です。そしてA/Bテストをやるならば、一度のテスト結果に頼らず、継続的にA/Bテストを行うことで、常に最適化されたアプローチを取ることができますので、とんでもない反応率を毎回たたき出すパターンが出ない限り、継続をし続けることが大事です。
年間戦略に落とし込む
新しいリストを得ることができれば新規集客でもそうですが、特に既存顧客に対してはダイレクトメールの戦略を年間スケジュールに落とし込むことは以下の理由から重要です。
ブランドの一貫性の確保
定期的にダイレクトメールを送付することで、ターゲット層に対するブランド認知を高め、一貫したメッセージを伝えることができます。年間スケジュールに基づく計画は、偶発的な送付ではなく、計画的かつ戦略的なコミュニケーションを可能にします。
シーズナリティを活かす
年間を通じて、季節やイベント(例えば、年末セールや新年キャンペーン、バレンタインデーなど)に合わせた適切なメッセージやオファーを計画的に提供することができます。これにより、ターゲット顧客の購買意欲を高めることが可能です。
予算とリソースの最適化
年間スケジュールを作成することで、予算を効率的に配分し、無駄を防ぐことができます。リソースの配分も適切に行うことができ、繁忙期と閑散期のバランスを取った施策が可能になります。
パフォーマンスの測定と改善
年間スケジュールに沿ってダイレクトメールを実施することで、各キャンペーンの成果を比較し、効果的な要素と改善が必要な要素を特定することが容易になります。これにより、年間を通じて施策の効果を向上させることができます。
顧客関係の強化
年間スケジュールに基づいて定期的に顧客とコミュニケーションを図ることで、顧客との関係を強化し、ロイヤルティを向上させることができます。また、パーソナライズされたメッセージを計画的に送ることで、顧客の満足度も向上します。
リスク管理
年間スケジュールを持つことで、予測可能なリスク(例えば、予算オーバーやタイミングのずれ)に対して早期に対応できるようになります。緊急の施策や予期せぬ事態にも柔軟に対応するための準備が整います。
チームの連携と効率化
スケジュールを共有することで、マーケティングチーム、デザインチームなどが連携しやすくなり、各部門の効率が向上します。これにより、全体的なプロジェクト管理がスムーズに進行します。
更なる顧客データの活用
年間スケジュールに基づいて、顧客データを継続的に収集・分析することで、より効果的なターゲティングとメッセージングが可能になります。これにより、各施策の精度が向上し、顧客のニーズに合わせたカスタマイズが実現します。
まとめ
ダイレクトメール施策は、単なる広告手段ではなく、顧客に対して真の価値を提供し、ブランドとの長期的な関係を築くための重要な接点です。ターゲットのニーズを理解し、それに応えるための最適なメッセージを届けることができれば、競争の激しい市場においても、他社との差別化を図ることが可能です。常にデータに基づいたアプローチを取り、時代に応じた最適化を行いながら、顧客との信頼関係を育む施策として、ダイレクトメールを最大限に活用していきましょう。