街の電器屋のブランディング

概況

2000年代前後より家電量販店が成長大型化し、街の電器屋さんの存在意義は相対的に長い間年々下がってきたと思われる。
街の電器屋に規模の経済が働き、その数も全国的に年々減ってきたが、2010年前後から大型量販店の吸収合併等の生き残りをかけた淘汰も始まる。これにより価格競争では大型量販店に太刀打ちできない街の電器屋でも、サービスやアフターケアなどソフトをそれなりに強化すれば地域でつけ入る隙ができた。ネット社会で便利になる一方、何か問い合わせをすると電話で部門をたらい回しにされたり、問い合わせしようにもメーカーなのか購入した家電量販店なのかわからない時代に、街の電器屋なら即連絡がつながり即親身に対応してくれるというのは、十分に強みになりうると想定される。斜陽産業であるが存在意義はあり、分が悪い価格勝負に持ち込まず、サービスなどのソフト面の強化で生き残り・存在意義を図るべき市場と考える。

ある街の電器屋の対策

,ほぼ月一回あった売り出しの催事を、年2~4回に減らす。その中で大型催事は夏と冬の2回にする。理由は、催事が多すぎるとお客様が催事のお得感やメリットを感じず麻痺してしまうからである。売り出し色の強い催事の匂いを消し、ご来店いただくことを優先するようにする。

,商品を大量に売って利益を出すのをメインとする「販売前利益モデル」から、商品を販売した後、故障対応やメンテナンス、設置や取付などを行う「販売後利益モデル」のビジネスモデルに転換するイメージを持つようにした。もちろん自社で購入いただいた商品でなくても、ご遠慮なくお問い合わせください的なメッセージをブランドサイト等に全面的に出した。初期の頃は昨年対比で売上は減ったが、販売後利益モデルに変化してい益率も利益額も上がり、3年後には利益額においても過去最高を出す。

,面白おかしい新聞チラシを年7~8回出すようにした。家電関連で困る人はいつ何時発生するかはわからないのでコンスタントに新聞チラシを出して存在を常々アピールするのがいいという判断に至った。値段が安いと書いても、価格だけなら家電量販店には負けてしまうわけで、家電量販店のウィークポイントである「家電で困ったらいつでも気軽に連絡OK」的なメッセージを常々出した。今までのデザインが街の電器屋が多用しているチラシのテンプレートだったのでそれを破棄し、新たにキャラクターを起こし賑やかにした。併せてアットホーム感も出すように心がけた。

,「エアコン 修理 ”地名”」「冷蔵庫 修理 ”地名”」など家電製品と修理、地名のエリアSEO対策を強化した。その地域で家電製品で困っている人からの問い合わせをどんどん受けられるようにした。

,店舗をリニューアルした。明るく繁盛店ムードを出すようにした。看板にこだわり店前視認性を良くした。

,既存客に対し、催事の近辺にあわせてDMを送るようにした。催事の認知で来店いただくことがメインではあるが、売り出しの匂いを常々下げて、何か家電に関しお困りの際は当店を思い出していただいて常に問い合わせいただける関係性を保つための存在認知の理由も強く存在した。

,上記施策の費用に関し、持続化補助金(旧小規模事業者持続化補助金<コロナ特例>を利用した。施策全体の税抜額の4分の3を補助してもらった。

展望

販売前利益モデルから販売後利益モデルへのスイッチは、多くの経営者にとって恐怖であることが多い。理由は売上がそれなりに大幅に下がるからである。しかし販売前利益モデルのプレイヤーが2000年以降増えてくる状態で、資金力や規模に乏しい街の電器屋がその市場で太刀打ちすれば大苦戦は必至である。リスクに見えるかもしれないがこれが正解であったと考える。販売前利益モデルに比べ、販売後利益モデルは派手さは無くものすごく地味であるが、初期投資が少なくまじめにしっかりやっていれば徐々に収益性が良くなってくるという特徴があり、まじめな経営者であったクライアントの社長とも波長があったというのもうまく行った理由の一つでもある。今後も販売後利益モデルのまま進み、サービスを展開するエリアをさらに拡げるかどうかが次の議論であると考える。

必要なもの

ホームページのリニューアル
キャラクター
ホームページ
SEO対策
MEO対策
独自のチラシテンプレート
LINE公式アカウント
DM対策

利用可能な補助金

●事業再構築補助金
●小規模事業者持続化補助金
●ものづくり補助金
●IT補助金
●(世代交代の場合)事業承継引継ぎ補助金
●経営力向上計画
●先端設備導入計画

総論

振り返ってみると、明るいキャラクターの設置を早々に決めて導入したのが結果良かったと思える案件である。まじめなお店は、まじめなチラシ等の広告物を作りやすい傾向があり、消費者から見ると面白味に欠けることが多い。また付け焼刃でただ可愛らしいキャラクターを設置して広告物に配置すると、時に人をバカにしているかのような印象を受けるケースがある。この会社を明るく元気に見せるため、それを補強する架空のキャラクター設定がある程度ズバリ決まったので、その後のホームページやチラシ、DM等に連動する一体感が生まれた。あとはエリアSEOを張り巡らし、お客様が困った時に問い合わせをしていただく環境を構築すれば問題の80%はクリアしたも同然であった。事実、この会社だけではなく、地域にお住まいで家電に困った人がこちらに問い合わせをして助かった人も多いことと思う。その会社にとっても、地域のお客様にとってもいい関係となるお手伝いができたことを当社としても誇りに思います。

DD社のホームページ
D社のホームページ
D社のキャラクター
D社のキャラクター
チラシデザイン
圧着DMの表面
圧着はがきDMの裏面
圧着DMの中面