概況
アルミ・ステンレス・鉄などの金属の屑、スクラップを引き取り、不純物を除き大きさを加工して販売する事業体である。事業を成立させるポイントは、①金属屑やスクラップを定期的に出してくれる業者をいかに集め固定化させるか?、②加工した金属を定期的に買ってくれる業者をいかに集め固定化させるか?、③金属の相場ができる限り安い時に仕入れ、高い時に販売、の3点であると考える。特に③は思い通りになるものではないものではないので、できることできないことは限定されるが、結局①に関し常日頃から定期的に買取ができていないと、商売が行き詰る。買取の間口を拡げることが第一優先、そしてその後加工金属を定期的に購入してくれる業者を探す順となる。また引き取った金属をどのように加工するか?がそれぞれの企業のブラックボックスになっており、技術力で高い純度の加工金属を提供できるというメッセージを拡げることも忘れてはいけない市場と思われる。
ある金属スクラップ業の対策
1,旧ホームページは、メイン商材である「ステンレス」に関し、関連キーワード「買取」「加工」「販売」と商圏を示す言葉の組み合わせでいずれにも検索に掛かっていなかった。この言葉の組み合わせで高度なSEO対策をすることを念頭に置きながら、全面的にホームページをリニューアルした。
2,「買取」「加工」「販売」という3つの業務フェーズが存在しているのが分かった。敢えてこの3つに優先順位をつけると、「買取」「販売」「加工」の順であることがわかった。キーワード検索数の順位は「加工」「買取」「販売」の順であったが、その企業が長年の実績で販売先はそれなりに保有しており、買取先さえ増えれば販売はいくらでも何とかなるとの中長期的展望より、特に「買取」に意識を置いたSEO対策を行った。
3,モグリの金属加工業との差別化を図るため、保有設備の充実を意識したホームページのページ作りを意識した。併せて一番自信のあるステンレスの業務も前に出した。
4,過去に使っていたキャラクターを復活させリブランディングし使用することにした。誠実な雰囲気を出しつつ明るく振る舞いたいという新しいブランドイメージのけん引役となった。
5,販売する時、お客様に安心して購入していただけるように品質証明書を発行することを明示し、ホームページに掲載した。
6,LINE公式アカウントを設定した。「このような金属くずなんですが引き取れますか?」などのコメントと共に気軽に写真を送っていただけるよう、新規お問い合わせを気軽にいただけるような体制を整えた。
7,持続化補助金(当時小規模事業者持続化補助金<コロナ特例>)を申請し採択されたので、新規取引業者募集のためのダイレクトメールを作成し、近隣都道府県において金属加工をしている業者に販促DMを送った。同時に事前申請も行い、先に交付決定額の半額に該当する50万円を補助金事務局からクライアント先に振り込んでいただいたため、資金的にも余裕をもって施策を行えた。
展望
特徴が「高く買い取ります」「安く販売します」だけではありきたりであるし、結局差別化にならないと考えたので、自社の強みとその論理的な説明&裏付けに終始したブランドイメージの構築となりました。近隣都道府県のSEOも強化されてきており、近隣地域からの取引も増えています。指定されたエリアに関しても2県にまたがって主要キーワードの検索結果1位を達成しており、基本的にはこのスタイルを続けていき、誠実な取引を続けていけば、未来は明るいと思います。
必要なもの
接客の心得(接客サービス)
ホームページのリニューアル
エリアSEO
グーグルマイビジネス(グーグルマップ)対策
キャラクター
情報発信のためのSNS発信
利用可能な補助金
●小規模事業者持続化補助金
●事業再構築補助金
●ものづくり補助金
●IT補助金
●(世代交代の場合)事業承継引継ぎ補助金
●経営力向上計画
●先端設備導入計画
総論
結局「高く買い取ります」「安く販売します」だけのメッセージ性しか主に出していないブランドイメージの企業は、新しく魅力的な顧客を惹きつけることには厳しいと想定する中、自社の強みを分かりやすく的確に伝えられるようになったいい例であると思います。金属スクラップ加工販売という特殊な市場においても、ブランドイメージの構築やブランディングの重要性を改めてよく感じた事例でもありました。