概況
コロナで大ダメージを受けた業界の一つである。コロナ禍が真っ最中の時は各種給付金で生きながらえた店舗も多かったと思われるが、給付金が一生続くはずはない。今後の数年間で多くの飲食店、特に居酒屋の倒産は増えると思われる。撤退するにしても原状回復費用が必要であったりするので、撤退も簡単なことではない。外で飲む文化がゼロにはなることは無いが、今まで行きつけのお店が5件ある人が2件に絞るなどは当然考えられる。縮小した市場の中で、いかに自分の店舗にお客様を惹きつけることができるのか?独自の魅力を押し出して、顧客を惹きつけ続けないといけない市場であると考える。
ある居酒屋の対策
1,一般的な居酒屋と同じに見られてしまう、定義されてしまうと粗利益的にも再来店率的にも不利に働くと当初から想定。「少しこだわった魚系の料理を出す」「日本酒に特に強い」という風に、良くも悪くも偏らせた。敢えて自分たちからニッチ化した。
2,自分たちからニッチ化したので、そのニッチの雰囲気に即したホームページを作成した。どういうところにこだわっているのか?、一般的なチェーンなどの居酒屋などとは違い、どのように楽しんでもらいたいのか?、和を中心とした料理の魅力、日本酒の奥深さなどを前面に押し出した。同時にツイッターなどのSNSも強化し、コンスタントな告知で自然な再来店を促した。
3,顧客アンケートを実施し、個人情報を教えてくれたお客様にお礼の言葉と次回クーポンが付いたお礼DMを送った。メインの店員3名は入れ墨もバリバリ入っている強面で、まさかそんな人がやっているお店から手書きのお礼のクーポンDMが届くとは、まずは一般的なお客様は思わない。そのギャップが効いた。あくまで再来店させるためにDMを送るようにという意識より、いろんなお店がある中で縁あって当店にきてくれてありがとう!という視点を前面に出す文章を書くことに集中させた。見返りのみを求めてDMを出している感じにならないように徹底注意した。誕生日おめでとうDMも送っている。それなりにリピートがある。
4,月に1度コース料理の日を設定した。週の中で集客力が弱い曜日を選択し、常連客に旬のオススメ料理と日本酒を特別価格で振る舞うイベントを設定した。原価額はそれなりにかかったが、通常売り上げが少ない曜日にまとまった売上が入るのが事前に分かるので、収益性にもそれなりに貢献した。
5,日本酒と地域を絡めてSEO対策とMEO対策を強化した。宣伝臭くなると店の特別感が薄まるので有料広告はほどほどにするように気をつけている。
展望
コロナ禍のダメージを一気に回復するのは難しいが、元々席数の多いお店ではないので、今いるお客を適切な距離感で大事にしていくことが新たなリスタートで大事であると考える。地域の飲食店の新陳代謝が激しく、潰れたお店も大量に出てくるけど、それなりにその後居抜きなどで新しい店舗が出ては潰れていくと想定される。そんな中、ドンと構えた自店舗のセールスポイントである「少しこだわった魚系の料理を出す」「日本酒に特に強い」というポイントを前面に出して、フリーク客に激しく浮気をさせないようにしつつ、イベント開催で常連客の紹介を誘導するなど、できるだけ類は友を呼ぶ的な共鳴力を使って、地道に顧客層を広げていけばまだまだ存続は可能であると考える。
必要なもの
ホームページ
SEO対策
MEO対策
ツイッター、インスタグラム
顧客フォローDM
利用可能な補助金
●事業再構築補助金
●小規模事業者持続化補助金
●ものづくり補助金
●IT補助金
●(世代交代の場合)事業承継引継ぎ補助金
●経営力向上計画
●先端設備導入計画
総論
この市場は全国で本当に苦しんでいる経営者の方も多いことと思われる。しかし残念ながら魔法の杖のような一気に売上や利益を上げる施策は無い。既存顧客をホールドしながら、既存顧客からの横のつながりを生かす、質をすこしづつ上げつつどうにか売価も上げつつ、何とか客単価もお客様にストレスを与えすぎない範囲で上げる。難しい話に捉える人も多いと思うが、これは別に飲食店や居酒屋で無くても、全ての商売に言えることでもある。自社なりに惹きつけるものを模索して磨く、共鳴する人を囲う、共鳴する人からの横のつながりから共鳴の輪を徐々に拡げていく、中小企業の場合はこれに尽きると考える。ベタではあるが意外にDMは効く。DMを出しそうにない人が、やらされ感で出しておらず自然な感じで出しているのがミソである。DM戦略をタイミングや年間スケジュールに落とし込み、緻密に各顧客にタイミングに応じて郵送していくだけでも、実はそれなりに業績は上がっていくはずであるが、意外に皆そんなことはやらない市場でもある。地味で緻密なことは苦手なのか、わかりやすい戦略を好む方が多いが、そんなに甘い事業ではないと当社は捉える。地域に飲食店が多すぎる場合が多い。