「アクイジションとリテンションの1:5効率」に関する調査は、多くのマーケティング研究者やビジネスコンサルタントによって取り上げられていますが、特に有名なのは、マーケティング界の著名な研究者である Frederick Reichheld(フレデリック・ライクヘルド)によるものと言われています。
目次
アクイジションとリテンションの1:5効率の意味するもの
ライクヘルドは、彼の著書「The Loyalty Effect(ロイヤルティ効果)」や「The Ultimate Question」において顧客ロイヤルティの重要性について論じており、「アクイジションとリテンションの1:5効率」というのは、新規顧客の獲得(アクイジション)にかかるコストと、既存顧客の維持(リテンション)にかかるコストの効率性を表す概念です。具体的には、新規顧客を獲得するためのコストが、既存顧客を維持するためのコストの約5倍に相当するということを示しています。
この効率性の差は、マーケティングや営業活動において顕著に現れます。新規顧客を獲得するためには、広告やプロモーション、セールス活動など多大なリソースが必要です。一方で、既存顧客はすでに企業やブランドに対して信頼感を持っているため、リピート購入や追加購入を促すためのコストは相対的に少なくなります。また、既存顧客はブランドに対してロイヤルティが高い傾向があり、長期的にはより多くの収益をもたらす可能性が高いです。
このため、多くの企業は新規顧客の獲得に加え、既存顧客のリテンションにも力を入れるべきだとされています。既存顧客を満足させ、長期的な関係を築くことで、企業はコストを抑えながら持続的な成長を実現できるのです。
ライクヘルドの調査方法
企業データの分析
ライクヘルドは、複数の企業から提供された詳細な財務データや顧客データを分析し、新規顧客を獲得するためのマーケティングコストや広告費、営業活動などにかかるコストと、既存顧客を維持するためのコスト(例:カスタマーサポート、ロイヤルティプログラム、サービスの改善など)を比較しました。
ロイヤルティ効果の研究
彼の著書「The Loyalty Effect(ロイヤルティ効果)」では、顧客ロイヤルティが企業の収益にどれほどの影響を与えるかを探求しました。この研究の一環として、顧客ロイヤルティの高い企業は、長期的に見て低い顧客離れ率(チャーンレート)を持ち、その結果、収益が安定し、マーケティングコストが削減できることが示されました。
業界全体のベンチマーク
ライクヘルドは、様々な業界の企業を対象にしたベンチマーク調査を通じて、新規顧客獲得と既存顧客維持に関するコストの違いを評価しました。多くのケーススタディや実証データを基に、「新規顧客の獲得は既存顧客の維持よりも5倍のコストがかかる」という一般的な指標を導き出しました。
ネット・プロモーター・スコア(NPS)の開発
ライクヘルドは、顧客満足度やロイヤルティを測定するための指標としてネット・プロモーター・スコア(NPS)を開発しました。このスコアは、顧客の推奨意向を測るもので、顧客ロイヤルティと企業の成長との関連性を評価する際に利用されました。NPSを通じて、顧客ロイヤルティが高い企業は、より低いマーケティングコストで成長できることが確認されています。
最終的には新規顧客も既存顧客もどちらも大事
いくら既存顧客の維持の方がコストが新規顧客獲得の5分の1で済むと言っても、では全く新規顧客を獲得しなくてもいいのか?というとそういうものではありません。
新規顧客の獲得は、売上の増加や市場シェアの拡大に直結します。新しい顧客層にアプローチすることで、ビジネスの成長を促し、新たな収益源を開拓することが可能になります。一方で、既存顧客の維持は、安定した収益をもたらし、顧客ロイヤルティを高めることで、長期的なビジネスの成功に貢献します。既存顧客は、既にブランドや製品に対する信頼を持っており、リピート購入やアップセルの機会が高いというのも特長です。
最終的には、新規顧客の獲得と既存顧客の維持をバランスよく行うことが、ビジネスの健全な成長にとって不可欠です。新規顧客を積極的に集めながらも、既存顧客との関係を強化し、両者をバランスよく管理することで、安定した売上と長期的な成長を実現することができます。このバランスを維持することが、ビジネスの成功に繋がる鍵となります。