「事業承継引継ぎ補助金」とは、経営者が高齢や病気などの理由で事業を継続することができない場合に、後継者に事業を引き継いでもらうために、国や地方自治体が支援する制度のことです。
この補助金を利用することで、事業を継承する後継者の負担を軽減し、スムーズな事業承継を支援することができます。具体的には、後継者が必要とする事業承継に関する支援や研修及び設備投資、コンサルティング費用などを補助することができます。
また、補助金を受けるには、一定の条件を満たす必要があります。例えば、後継者が経営に必要な資格を持っていることや、事業を継続するために必要な設備や人材を確保することが求められる場合があります。
事業承継は、事業を継続するために非常に重要な課題です。この制度を活用することで、後継者の育成や事業継続計画の策定など、事業承継に関する様々な課題を解決することができます。
◆申請枠の概要
申請枠には主に3つの類型があります。
※公募要領2022年7月の情報です。
1,経営革新事業
経営革新事業は以下の3つの型があります。
①創業支援型(Ⅰ型)
<条件1>
創業を契機に、引き継いだ経営資源を利用して新たに経営革新に取り組む方。
<条件2>
創業にあたり、廃業を検討している方から、株式の譲渡・事業の譲渡などにより有機的一体としての経営資源を引き継ぐ方。
②経営者交代型(Ⅱ型)
<条件1>
事業の承継をきっかけとして新たに経営革新等に取り組む方。
<条件2>
産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける方等、一定の実績や知識等を有する方。
<条件3>
地域の雇用をはじめ、地域経済全体をけん引する事業等の創業を契機として、引き継いだ経営資源を活用して新たに経営革新等に取り組む方。
③M&A型(Ⅲ型)
<条件1>
事業再編や事業統合などをきっかけとして、経営革新等に取り組む方。
<条件2>
産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により、特定創業支援事業を受ける方等、一定の実績や知識をお持ちの方。
<条件3>
地域の雇用をはじめ、地域経済全般をけん引する事業等を事業承継を契機として、経営革新に取り組む方。
対象経費は、⼈件費、店舗等借⼊費、設備費、原材料費、産業財産権等関連経費、謝⾦、旅費、マーケティング調査費、広報費、会場借料費、外注費、委託費、廃業費(廃業⽀援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転・移設費⽤)等で、補助率は補助対象経費の2分の1以内、補助上限は500万円以内です。
2,専門家活用事業
専門家活動事業は以下の2つの型があります。
①買い手支援型(Ⅰ型)
事業再編・事業統合に伴って株式・経営支援を譲り受ける予定の中小企業などを支援する類型です。
対象は、株式・経営資源の引継ぎに関する最終契約書の契約当事者(予定含む)となる中小企業者の方。
②売り手支援型(Ⅱ型)
事業再編・事業統合に伴って株式・経営支援を譲り渡す予定の中小企業などを支援する類型です。
対象は、株式・経営資源の引継ぎに関する最終契約書の契約当事者(予定含む)となる中小企業者の方。
なお共同申請も可能です。
対象経費は、謝⾦、旅費、外注費、委託費、システム利⽤料、保険料、廃業費(廃業⽀援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転・移設費⽤)等で、補助率は補助対象経費の2分の1以内、補助上限は400万円以内です。
3,廃業・再チャレンジ事業
廃業・再チャレンジ事業には2つのケースがあります。
①単独申請
M&Aによって事業を譲り渡せなかった中小企業者等の株主や個人事業主が、地域の新たな需要の創造や雇用の創出にも資する新たなチャレンジをするために、既存の事業を廃業する場合。
②併用申請
②ー1【経営革新】事業承継に伴う廃業
事業承継によって事業を譲り受け、新たな取り組みを実施するに当たって、既存の事業や譲り受けた事業の一部を廃業する場合。
②ー2【専門家活用(買い手)】事業の譲り受けに伴う廃業
M&Aによって事業を譲り受けるに当たって、既存の事業や、譲り受けた事業の一部を廃業する場合。
②ー3【門家活用(売り手)】事業の譲り渡しに伴う廃業
M&Aによって事業を譲り渡す場合に、M&A後も⼿元に残った事業を廃業する場合。
対象経費は、廃業費(廃業⽀援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転・移設費⽤)等で、補助率は補助対象経費の2分の1以内、補助上限は150万円以内です。
◆主な申請条件
1.経営革新事業
・創業支援型、経営者交代型共に事業承継対応期間(2023年度版は2017年4月1日から2023 年10月17日までが対象期間)に、事業を引き継がせる必要がある。
2.専門家活用事業
・経営資源を譲り渡す者と経営支援を譲り受ける者の間で事業再編・事業統合が着手又は実施される予定であること。又は廃業を伴う事業再編・事業統合等が行われる予定である必要がある。
3.廃業・再チャレンジ事業
・日本国内に拠点又は居住地を持ち、日本国内で事業を営む者である必要がある。
・廃業再チャレンジの場合、補助事業期間に終了日までにM&A又は廃業が完了している必要がある。再チャレンジ申請の場合は補助事業期間終了日までに廃業が完了している必要がある。
◆要点
・事業承継や引継ぎが明確に証明できる場合は申請は比較的スムーズであるが、M&Aの場合は引き継ぐ方、引き継がれる方双方の立場を証明する必要があるので、手続きに注意する必要がある。
・申請時に他の補助金のように複雑な事業計画書を求められていないので、他の補助金に比べて申請しやすい。
◆採択されるポイント
・「経営革新事業」「専門家活用事業」「廃業・再チャレンジ事業」それぞれに様々な類型が定められており、詳細に区分されています。申請する場合、まず申請する型が正しいのか?をしっかりと検討する必要があるのと、証明する資料を揃えることが大事です。申請した類型に当てはまらない場合は不採択になるので注意。
◆総論
申請する類型を正しく吟味し、ちゃんと資料を集めて申請すれば、かなりの確率で採択される魅力的な補助金と言えます。当社の場合は基本的に1の経営革新事業の経営者交代型の依頼が多いのでそれを行うことが多いですが、類型の証明のために割く時間が大よそ半分くらいの感じなので、申請条件に当てはまりさえすれば全ての人にチャンスがあると言えると思います。ただ年度によって違うのですが、2023年度の補助率が基本2分の1となっており、補助率的には他の補助金に比べると魅力を落としてしまうところもあります。ちなみに年度によって3分の2になっていた年もあります。今後はM&Aに関するニーズも上がってくると思いますので、引き続き注目していきたいと思います。